膵炎のねこさんにとって、どんなフードが良いんだろう?
膵炎の治療は、投薬や点滴を行って制吐、疼痛管理をすることが基本となります。入院か通院治療かは、重症度やねこさんの性格によって判断がされます。
そして、医療的な治療と並行して重要となってくるのは、やはり食事です。人間や犬さんの膵炎治療では、絶食が行われることがありますが、ねこさんに関してはこれは行われません。なぜなら、ねこさんの絶食は腸の萎縮や肝リピドーシスに陥るため、なるべく食事をとることが求められるからです。症状が激しく出ている際は、食事療法食(流動食)などねこさんに栄養を取ってもらうことが最重要となります。
そして、概ね回復期や回復した後は、なるべく膵炎を繰り返さないようなフードを食べてもらえればと思います。特に、急性膵炎を繰り返してしまうねこさんや慢性膵炎に移行したねこさんは、身体に合うフードを探してあげることが大切になってきます。ただ、どんな病気においても、合うフードを探すというのは難しいことです。
膵炎ねこさんのフードを考えるにあたり、まずは膵炎とはどんな病気か、その症状や原因について簡単にまとめてみたいと思います。
膵炎とは
膵炎は代表的な膵臓の病気ですが、「急性膵炎」 と「 慢性膵炎」 に分けられます。
急性膵炎は、正常時には膵炎内で不活性化な状態で存在している消化酵素が、何らかの原因で消化酵素が活性化してしまう病気です。これにより、消化酵素が膵炎自体を消化してしまい、炎症が引き起こされてしまいます。さらに、消化酵素が漏れることで膵臓周囲の臓器にも障害を与えてしまいます。急性膵炎は、一度なったら戻らないといった不可逆的な膵炎の組織変化は伴わないものを指します。
対して慢性膵炎は、膵臓の持続的な炎症反応により、膵臓の繊維化や細胞萎縮といった不可逆的な状態になってしまい、膵臓の機能が低下していくことを言います。急性膵炎の繰り返しが慢性膵炎へと至ることもあります。
膵炎の原因
ねこの膵炎の原因ですが、明確な原因はわかっていないと言われています。ただし、膵炎を引き起こしやすくする要因としては、遺伝やストレス、ウイルスや寄生虫への感染、お腹を打つような落下や事故などの外傷、薬、免疫の疾患などが考えられるそうです。また、人間や犬さんでは高脂肪食や高脂血症などが膵炎の要因とされるデータがありますが、ねこさんでは高脂肪が原因というデータが無いという状況です。
ただ、我が家の兄妹ねこさんは2匹とも膵炎を発症しているため、遺伝…?と思っています。食べていたフードは特に高脂肪食ではありませんでしたし、何かの感染や外傷もない状態でした。
膵炎の症状
膵炎の症状としては、1日に何度も嘔吐や下痢を繰り返し、食欲が急になくなる、上腹部を痛がる、動きが鈍くなるといった症状が現れることが多いです。
- 1日に何度も嘔吐を繰り返す(嘔吐物に毛などはなく、嘔吐後時間が経っても食欲がない)
- 下痢を繰り返す
- 食欲が急になくなる
- お腹を触ると痛がる
- 食事後に寝転がらないなど、様子がおかしい(膵炎時は食後お腹が痛くなるため)
- 動きが鈍くなる
膵炎ねこさんには、どんなフードが良いとされているのか。
ねこさんの膵炎においては、食事中の脂肪制限を支持するデータは存在しない状況です。
ただし、動物病院では高脂肪ではないフードを奨められることがありますし、フードメーカーさんの禁忌事項を読んでみると脂肪が高いフードは膵炎には推奨しないと書いてあるものがあります。ここでの脂肪が高いとは、具体的に脂肪何%くらいなのかと調べてみると、約20%以上で禁忌事項に膵炎を入れているメーカーさんがありました。逆に、別メーカーさんでは特に記載がなかったりもしますし、この点からもねこさんのフードにおける脂肪の含有量が膵炎に影響を与えるか否かについて明確でないことが表れているように思っています。
我が家では、「急性膵炎を繰り返して今は週2回の皮下点滴により症状が落ち着いているねこさん」と「急性膵炎の繰り返しにより慢性膵炎初期に移行して3日おきに皮下点滴をしているねこさん」がいます。余談ですが皮下点滴は、ブレンダZ、ミラクリッド、セレニア、アンピシリン・ファモチジン、ベルパリン、プレドニゾロン(ステロイド)、インターフェロンなど基本的に膵炎および膵炎により起こる症状を抑えるものになっています。
そのため、極力、急性膵炎の予防と慢性膵炎に対応出来得るフードを考える必要があり、我が家では食べてもらうことを第一にしてなるべく高脂肪ではないフードを選んでいます。これについては、膵炎発症後の我が家のねこさんが脂肪が低いフードの方をよく食べるようになったということも大きかったです。
我が家セレクト 膵炎ねこさんへのおすすめドライフード
いくつかドライフードを紹介させて頂くのですが、先にまとめから述べさせて頂きますとヒルズのi/dとロイヤルカナンの消化器サポートは栄養化が高いことから、膵炎により痩せてしまったねこさんには良い点も多いフードかと思います。逆にこれらのフードを食べると少し膵炎の症状が出てしまうというようなねこさんは、ロイヤルカナンのセレクトプロテインダックライスが良いのではないかと思います。このあたりは、ねこさんの体調と獣医さんと相談しつつ選んでみて頂ければと思っています。
ヒルズ i/d 消化ケア
優れた消化性で、消化器症状のケアに役立ち、便質を改善することが科学的に証明された療法食です。電解質とビタミンBが豊富に含まれているため、栄養素を吸収しやすく、失われた栄養素を補います。
このフードはドライとウェットがあります。どちらも我が家の膵炎ねこさんが食べていたことがあります。
ドライは半年近くは食べていました。ただ、急性膵炎を繰り返すようになった際に脂肪20%が気になったこと、ねこさん自身があまり食べなくなったことから現在は食べていない状況です。
ロイヤルカナン 消化器サポート
消化器サポートは、嘔吐や下痢、軟便などの消化器疾患や栄養要求の高まっているねこに与えることを目的として調製された食事療法食です。そのため、少ない量で必要なカロリーや栄養素が摂取できるように設計されています。
ヒルズのi/dとロイヤルカナンの消化器サポートは、概ね同じ症状への療法食であるようで獣医さんからも同時にサンプルを頂いたことがあります。ただ、こちらにおいても気になる点は脂質が20%以上であることと、脂質20%以上である消化器サポートの資料には膵炎が推奨されない病態として挙がっているということです。
我が家では、膵炎発症後に数ヶ月与えてみたことがありましたが、i/dと同様に脂肪20%以上が気になったこと、ねこさん自身があまり食べなくなったことから現在は食べていない状況です。
ロイヤルカナン セレクトプロテインダックライス
食物アレルギーによる皮膚症状・消化器症状を呈するねこさんのための療法食です。タンパク質の数を制限することでアレルギーのリスクを軽減し、消化性の高いタンパク源(ダック)および炭水化物源(ライス)を使用しています。
こちらのフードは、脂質が9.0%以上と低脂質です。また消化性が高いことから、膵臓や他の臓器への負担も軽減できるのではないかと思っています。
我が家セレクト 膵炎ねこさんへのおすすめウェットフード
セレクトプロテイン チキン&ライス ウェット パウチ
食物アレルギーによる皮膚症状・消化器症状を呈するねこさんのための療法食です。タンパク質の数を制限することでアレルギーのリスクを軽減し、消化性の高いタンパク源(チキン)および炭水化物源(ライス)を使用しています。
こちらのウェットフードはドライと同様に、脂質が4.0%以上と低脂質です。また消化性が高いことから、膵炎や他の臓器への負担も軽減できるのではないかと思います。
ロイヤルカナン クリティカル リキッド
ウェットフードとは少しカテゴリーが異なるかもしれませんが、こちらは膵炎発症時に大変お世話になった療法食になります。
クリティカル リキッドは、栄養要求量が高まっている犬やねこさんに給与する目的で特別に調製された食事療法食です。消化性の高い原材料を使用し、カロリー含有量を高め、各栄養素を強化しています。
流動食であるため、シリンジで吸い取って給餌する形になります。膵炎時の最終手段と思っています。動物病院やネット通販で売られているものですが、2024年8月段階だと品切れが多い印象です。一応リンクを張っておきますが、通常だと3本で3,000円くらいかと思いますので、購入の際は価格変動に注意をして頂ければと思います。
まとめ
急性膵炎は、特に原因が不明瞭な病気であるため発症原因が食事以外のこともあるかと思います。ただ、やはり食は身体を作る基盤であることは確かですので、なるべくしっかり体力がついて膵炎にも影響が少ないごはんを食べて欲しいと考えています。
どんな病気においても、ねこさんに合うフードを探すというのは難しいことです。そういったときは、他のねこさんの飼い主さん達のフードセレクトなども参考にしつつ、獣医さんと相談してサンプルを試してみるなどが良い方法ではないかと思っています。
我が家のねこさんで一番大切だったと思う点は、しっかり記録をつけることです。毎日の飲食の量や排せつ回数・状況などをexcelで手作りした日誌に書き込むということをしています。データの蓄積によって、後からしっかり分析することも可能になります。