ねこさんが糖尿病になって、インスリン注射が必要になった。
何が必要で、どんな工夫ができる?
糖尿病ねこさんのインスリン注射について、糖尿病の症状やインスリンの扱い方、獣医さんとの相談事項などを含めてまとめてみました。糖尿病ねこさんと飼い主さんの参考に少しでもなれば、とても嬉しいです。
糖尿病とは
ねこさんの糖尿病の症状としては多くみられるものは、下記のものがあります。
- 多飲多尿
- 脱水症状
- 食べているのに体重が減っていく
- 進行すると元気消失や食欲不振
- 進行するとかかとをつけた歩き方(蹠行(ショコウ))
血糖値が300mg/dl台に入ってしまったら、糖尿病の疑いが高いといえます。ただし、ねこは病院受診のストレスにより一時的な高血糖を起こす場合があります。そのため、目立った糖尿病の症状がなく、血糖値が100mg/dl台後半〜200mg/dl台前半であれば、時間をおいて血糖値や長期の糖尿病マーカー、尿糖などについて再検査になります。
糖尿病の治療方法
糖尿病は、栄養をエネルギーとして利用できなくなり、体が栄養失調に陥る病気です。糖分が利用できないことで、蓄えていた脂肪を緊急用エネルギーとして使い始めます。これにより、脂肪をエネルギーに変える過程でケトンが生み出されることになります。このケトンが身体を酸性に傾いた状況「ケトアシドーシス」という重篤な状態へと進行させてしまうのです。
このため、糖尿病と確定した際は症状が必ず進行して治療が必要になります。治療後に稀に糖尿病から離脱できる可能性があると言われていますが、初期〜中期にかけては全ての糖尿猫で治療が必要になります。
血糖曲線作成
糖尿病発症のねこさんは、元気や食欲の低下など症状が進行していることが多いと言われています。このため、通院や入院で点滴により体のイオンバランスを整えたり、インスリン治療を施すなどの集中治療で一旦体を正常な状態まで戻します。
その後、日常的に用いるインスリンの種類や量などを決定するために血糖値曲線というものを作成します。血糖値曲線とは、インスリン投与後1〜2時間ごとの血糖値を測定し、その推移を折れ線グラフ化したものです。これを繰り返しながらインスリンの量を調整していきます。病院内で行われる際は、6時間程度は滞在する必要があるため、ねこさんによっては血糖値に影響を与えてしまうことがあります。
我が家の場合は、インスリン投与後に一度家に戻って通常通りフードを食べてもらい、病院に2時間おきに3回程度通うということを繰り返しました。糖尿病発症当時は血糖測定器を持っていなかったため、選択肢としては病院内か日に何度も通院かになるかと思います。
「FreeStyleリブレ」という連続血糖測定器などもあります。500円玉程度の測定器を直径5cm程度毛刈りしたねこさんの皮膚に装着します。脇腹などに装着することが多いそうです。これは、ねこさんの性格によりまして気にするねこさんだと剥がしてしまうそうです。我が家のねこさんは包帯すら嫌なので、無理という判断をしました。
ねこの血糖値としてどの程度を目指すかは、獣医さんによって違うようです。ただ、多くの獣医さんでは低血糖リスクを回避することを意識して正常より少し高めの(150~250mg/dl)を目標としています。
どのインスリンがよいのか?
ねこさんの糖尿病治療でよく使用されるインスリンは、ランタス・レベミル・プロジンクなどがあります。
獣医さんいわく、どのインスリンが良いのか?という質問がよく飼い主さんからされるとのことでした。これに関しては、獣医さんの経験や病院の方針、ねこさんの糖尿病に適したインスリンを用いることが最も良いとのことです。
我が家のねこさんは、最初の病院ではランタスでした。ただ、血糖値が安定しないことと、そちらの病院ではペン型のインスリンのみで0.1単位ごとの処方が難しいとのことでしたので、次の病院でセカンドオピニオンをしてもらいました。そちらでは、レべミルに変更となりました。その際も、うちの病院はレべミルで長く治療に使っているので経験的に判断がし易いためレべミルを選んでいるというようなお話でした。プロジンクが犬猫用のインスリンというイメージだったので、この点は意外なことでした。
インスリン管理の注意点
- 衝撃で成分が壊れる(冷蔵庫の扉部分にインスリンを置かない)
- 温度管理・直射日光に気を付ける
- 夏場にインスリンを処方された時は、インスリンを保冷剤と一緒に持ち歩くなどの工夫が必要
インスリンは衝撃で成分が壊れるため、冷蔵庫の扉部分に置かないでください。また、30度以下の室温で凍結を避けるため冷やし過ぎず、基本的には遮光されている冷蔵庫で保存が良いとされています。
インスリン注射について獣医さんと相談しておくこと
決められた時間に打てなかった場合
我が家では30分程度は前後しても良いというルールにしています。獣医さんいわく、1時間程度なら経験的に大丈夫だとは思うとのことでしたが、決められた時間にインスリンを打てなかった場合のルールはかかりつけの獣医さんに確認しておく必要があるかと思います。
注射をするのを忘れた場合
注射を忘れた場合、どのくらい後まで注射時間がズレても大丈夫か、1回飛ばして次のインスリン時間まで待つのは何時間経過後からかは、かかりつけの獣医さんに確認しておく必要があります。
ごはんを食べない場合(全く食べない時、半分食べる時など)
我が家では、膵炎の悪化や毛玉を吐いた時などにフードを食べなくなってしまうことがあります。この際、インスリンを打たない方が良い判断はどの程度食べない時か、半分程度食べる時はインスリンは何単位打つべきかについて早めに獣医さんに確認をしていました。インスリンを打つ時間に動物病院が閉まっていることも考えれるからです。
現在は、どうしてもフードを食べない時などの緊急時のみ、フードの食べる量に加えて簡易血糖器で血糖値を測定するして、インスリン量を調整することもあります。
注射後様子がおかしい場合
低血糖は、一時的な高血糖よりも怖いものです。
症状としては、下記のようなものがあります。
- ふらつく
- 目の焦点が合わない
- 弛緩、痙攣、ひきつけを起こす
我が家のねこさんは、インスリン治療を始めたばかりの時、膵炎発症によりインスリン単位を調整していた時の2回ほど低血糖になったことがあります。
1回目は、目の焦点が合わず寝たままで硬直しているという状況でした。弛緩と聞いていたので低血糖か判断がつかず、かなり焦りながらも様子がおかしかったためブドウ糖をシリンジで与えました。その結果、15分程度で回復しました。人生で最大に近い焦りでしたので、ブドウ糖とシリンジの使い方を事前にチェックしておくのが良い痛感しました。
2回目は、膵炎治療時で血糖値が安定せずインスリン量を調整していた時でした。ぼーっとして歩きながら頭を前後に降っていたのでこれはもしや?と思い、ウェットのスープをシリンジで与えました。結果、頭を振る症状は治まりました。獣医さんに相談したところ、低血糖だろうとのことでした。
膵炎など他の病気の併発により食欲がないと、血糖値が安定せずインスリン量が多すぎてしまうことがあります。また、逆に膵炎などが回復した結果、インスリンが効きすぎるということもあり得ます。稀にみられる糖尿病からの離脱前なども注意が必要と言われています。
インスリン注射の位置
インスリンは皮下注射になるため、背中や後ろ脚付近などの皮膚の伸びる場所が良いと言われています。我が家のねこさんは、背中は点滴をすることが多いので後ろ脚の太い部分に打っています。基本的にはかかりつけ獣医さんに打つ位置を相談することが良いかと思います。
下の写真は左が背中、右は後ろ脚です。
インスリン注射の手順とコツ
我が家でのインスリン注射の手順とコツ、工夫している点などについてまとめたいと思います。
好物のウェットフードを準備する
ます、好物のウェットフードを湯煎してフードボウルに盛ります。フードボウルはあまり低すぎない方がねこさんの食べやすさに加えて、インスリンが打ちやすい体勢であることがわかり、猫壱さんのフードボウルを使っています。
首の付け根付近を軽く保定しておく
保定してくれる人がいる場合は、ねこさんの真正面から首部分を軽く保定してもらいます。保定する人は、注射時にねこさんが動いた時には、すぐに保定を強めるように心の準備をしておきます。
エタノール綿で消毒する
注射部分をエタノール綿で消毒します。この際、不器用な自分は結構広範囲を消毒しておくことにしています。打つ箇所が消毒した箇所からずれることがあるからです。
皮膚を持ち上げる
ねこさんの皮膚をつまんで持ち上げます。私は親指、人差し指、中指の3本でつまみます。人差し指の下に出来た赤矢印のくぼんだ場所に針が入るように刺す形になります。
左の写真がインスリン注射を打つ飼い主さんの真正面から見たイメージ、右は横から見たイメージです。
注射を打つ
親指と中指で注射器を挟み、同じ手の人差し指で内筒を押し込み、インスリンを注入します。
注射の持ち方は、たばこを持つ持ち方と教わりました。たばこ吸わないので検索した思い出があります。また、指の位置がいまいち難しかったかめ、使用後の注射器に水を入れて何度か押し出しやすい位置を探りました。あとは、ぬいぐるみに刺してみたりもしました。
イメージとして、ねこは毛があって、表皮、皮下組織、筋肉となっています。皮膚を伸ばした時に伸びずに体のシルエットを作っているものが筋肉、伸びているのが毛、表皮、皮下組織です。そのため、あまりにもねこさんに対して垂直に打つと筋肉まで届いてしまいます。逆に上や水平すぎると表皮(皮内)にインスリンが入ってしまいます。そのため、気持ち下に向けて打つようにしています。皮内注射になってしまうと、その場所が少し瘡蓋のようになってしまうようです。数度経験があります。
また、皮膚を貫通してうち漏れしてしまうことがインスリン注射の怖いことの1つだと思います。つまんだ際に、利き手の人差し指で打つ場所をツンツンしてみてください。その場所に空間がありそうな感覚がします。
あとは、とにかく経験です。最初は動物病院で獣医さんに診てもらいながら打つ練習をするのも良いと思います。
注射後は、注射した箇所の匂いを嗅いでインスリンが漏れていないかを確認します。インスリンは独特な匂いのため、すぐに分かるかと思います。なお、インスリン注射した場所はもんではいけません。
ペン型は、親指以外で包むように持ち親指で押し込んで打ち込みます。打ち込む前に空打ちが必要となります。空打ちをした後、押し込んだ親指に力を込めたまま10秒程度待ちます。ランタスのペン型を使っていた際に、すぐ離してしまう失敗が多くありました。私にはカチッとなると離してしまう癖があったようです。
まとめ
インスリン用の注射針はとても細くて鋭いので、ねこさんはほとんど痛みを感じないと言われています。ただ、最初はやはり飼い主さんが緊張してしまうものです。そして、この緊張がねこさんに伝わってしまい、インスリン注射時に逃げたり暴れたりということになってしまいます。その際は、大好きなフードに集中してもらっているうちにインスリンを打つなど工夫をしながらチャレンジしていくことが大切です。
慣れればできると言われても最初は無理かもしれないと落ち込むこともあります。こればかりは、本当にうまくいくことも失敗することも経験していくしかありません。ただし、上手くいかない場合は、何度でも獣医さんに質問して一緒に改善していけるようにしましょう。飼い主さんは一人ではありません。ねこさんと飼い主さん、獣医さんで連携して頑張ることが大切だと思います。